2017年度、島根県津和野町出身の北斎研究者・永田生慈（ながたせいじ）氏（1951-2018）より、北斎とその門人の作品・資料2,398件が島根県へ寄贈されました。この「永田コレクション」は、北斎に関する個人コレクションとしては世界屈指の規模を誇ると共に、北斎研究上、極めて貴重な作品や資料の宝庫であり、島根県立美術館（松江市）と当館では、複数回の展覧会を通じて、その全貌を公開する予定です。本展はその〈一章〉として、北斎が浮世絵界にデビューした20歳から45歳頃まで、主に用いていた画号から「春朗（しゅんろう）期」・「宗理（そうり）期」とよばれる、若き日の北斎に焦点を当てます。
北斎の生涯の中でもこの両期は、現存数や資料が少なく、謎多き時期とされていますが、永田氏は当該期の作品博捜に努め、春朗期では約90点、宗理期では約340点もの作品を蒐集（しゅうしゅう）。それらの研究を通して、北斎の知られざる様々な側面を明らかにされました。
本展では、そんな蒐集と研究が一体化した「永田コレクション」より、春朗期と宗理期の作品を中心に約280点を公開します。特に、極めて稀少な春朗期の肉筆画、宗理期における第一級の摺物群「津和野藩伝来摺物」は必見です。北斎の春朗期・宗理期だけに焦点を当てる貴重な本展は、永田コレクションが県外不出のコレクションのため、島根県でしか見ることができません。
世界に轟（とどろ）く画号「葛飾北斎」を名のることも、代表作『北斎漫画』・《冨嶽三十六景》を描くこともまだ先のことーそんな北斎の知られざる若き日の研鑽（けんさん）と挑戦の軌跡をぜひご覧ください。
［会期］2023年12月23日（土）～2024年2月12日（月・振休）
【前期】12月23日（土）～1月15日（月） 【後期】1月17日（水）～2月12日（月・振休）
［開館時間］9:30～18:00（展示室への入場は17:30まで）
［休館日］毎週火曜日、12月28日（木）～1月2日（火）
［会場］展示室D
［観覧料］
| 当日券 | 前売券 | ||
| 企画展 | 企画展・コレクション展セット | ||
| 一 般 | 1,000（800） | 1,150（920） | 900 |
| 大学生 | 600（450） | 700（530） | 500 |
| 小中高生 | 無料 | 無料 | － |
単位：円
※（ ）内は20名以上の団体料金
※小中高生の学校利用は入場無料
※各種障がい者手帳、被爆者健康手帳をお持ちの方およびその介助者（1名様まで）は入場無料
※前売券は、ローソン各店（Lコード：63825）、グラントワ総合案内カウンターで（開幕前日まで）お求めになれます。
※小中高生の方は、小中高生チケット（無料）をグラントワ総合案内カウンターでお受け取りの上、ご入場ください。
［主催］島根県立石見美術館、しまね文化振興財団、山陰中央新報社、BSS山陰放送
［特別協力］島根県立美術館
［協力］津和野町／津和野町教育委員会
［後援］芸術文化とふれあう協議会
◎ 企画展「石見特別版 永田コレクションの全貌公開〈一章〉北斎－『春朗期』・『宗理期』編」チラシ は → こちら（PDFファイル：4.29MB）
本展は、2023年2月から3月に島根県立美術館（松江市）で開催された展覧会を引き継ぎつつ、石見独自の内容も盛り込み、「石見特別版」として開催します。
みどころ1
松江からの巡回展？ いいえ！石見独自のラインナップです！！
島根県立美術館では展示されなかった当館だけの出品作が多数（約40点）！
展示構成も石見オリジナルですよ！
『鶏鐘筐衣々（富本節正本）』【前期展示】
みどころ2
初公開！ 新出の肉筆春画『逢身八契画帖（おうみはっけいがじょう）』
永田生慈氏が生前「春朗期の特徴が顕著」と書き記していた、全8図から成る春画の画帖（アルバム）。
繳密な筆づかいと鮮麗な色彩をのこす肉筆画で、本展で初公開します。
『逢身八契画帖』【通期展示】
みどころ3
《冨嶽三十六景（ふがくさんじゅうろっけい）》など北斎生涯の代表作も！
展示室の最後では『北斎漫画』・《冨嶽三十六景》・最晩年の肉筆画など、北斎生涯の代表作も堪能いただけます！
《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》【後期展示】
春朗期 ～多彩な習作期（数え20～35歳頃）
北斎は十九歳で役者似顔絵の第一人者・勝川春章（かつかわしゅんしょう）に入門したとされ、その翌年には「勝川春朗」の名で作品を発表し始めます。この「春朗」を名のった二十歳から三十五歳までは、北斎の七十年に及ぶ全画業の中で習作期と位置づけられ、様々な画派の表現を貪欲に吸収し、画技の研鑽（けんさん）に努めた時期です。錦絵（にしきえ）（※1）では勝川派らしい役者絵を中心に、美人画、武者絵、浮絵（うきえ）など様々な画題を手がけ、版本（はんぽん）（※2）では黄表紙（きびょうし）（大人向けの絵入り小説）の挿絵を精力的に描くなど、多彩な作画活動を展開しました。一方、摺物（すりもの）（※3）については、春朗期の後半からわずかに作例が知られ、それらの中に、次期「宗理期」に通じる叙情的要素が見出せるようになります。また肉筆画（にくひつが）（※4）の現存遺品は極めて少なく、完成品である本画としては、「永田コレクション」の《婦女風俗図》と《鍾馗図（しょうきず）》が知られる程度です。師春章没後の寛政六年（一七九四）頃、春朗は勝川派を離れたと思われます。
用語説明
※1【錦絵】 … 複数の版木を摺り重ねる高度な多色摺木版技法で、江戸時代後期には一般向けに販売される浮世絵版画の代名詞となる。
※2【版本】 … 版画で作られた本のこと。多種多様な版本があり、北斎が手がけた版本挿絵も、黄表紙、狂歌本、読本、絵手本など多岐にわたる。
※3【摺物】 … 主に裕福な趣味人らが私的目的で作った非売品の浮世絵版画。多くは高級な材料を用い、彫りや摺りにもこだわって制作された。
※4【肉筆画】 … 絵師が絵筆で紙や絹などに描いた絵のこと。版画が複数摺刷されるのに対して一点物で、個々の浮世絵師の造形力をストレートに鑑賞できる。
「春朗」の落款を有す現存唯一の肉筆本画
《鍾馗図》【通期展示】
本格摺物の初作にして現存唯一
《冷水売り》【前期展示】
北斎の錦絵デビュー作など細判役者絵を前後期で14点展示
《市川鰕蔵 かげきよ》【前期展示】
《冨嶽三十六景》の原点・「浮絵」を前後期で6点展示
《浮絵忠臣蔵夜討之図》【後期展示】
貴重な春朗期唯一の大判美人画シリーズ
《花くらへ 弥生の雛形》【後期展示】
宗理期 ～摺物・狂歌本の世界へ（数え35～45歳頃）
寛政六年（一七九四）頃、勝川派を離れた春朗は、琳派（りんぱ）の流れを汲む「俵屋（たわらや）宗理」の名を継ぎます。北斎はこの襲名を機に、富裕な趣味人からの私的注文による摺物や狂歌本の挿絵、肉筆画など、春朗期ではほとんど手がけなかった新たな分野に挑戦。画風も一変し、「宗理風」とよばれる楚々とした優美な女性像に象徴される、温雅で叙情性漂う表現で世評を得ました。寛政十年（一七九八）、北斎は「宗理」号を門人に譲って「北斎辰政（ときまさ）」と改号し、さらに「画狂人（がきょうじん）北斎」と号すようになり、これ以降、どの浮世絵画派にも属さない独立した絵師となります。ただ宗理襲名後に確立した叙情的な画風は、この独立以降も文化二年（一八〇五）頃まで一貫することから、この約十年間は「宗理期」と呼ばれています。なお錦絵の制作は、宗理派在籍時に一時途絶えますが、享和期（一八〇一～〇四）から再び手がけるようになります。中でも西洋の透視遠近法や銅版画の影響を受けた特色ある洋風風景画を描きました。
北斎狂歌本の傑作にして全23図が揃った希少な完本
『みやことり』【通期展示（展示箇所変更）】
世界に轟く「北斎」改名を宣言した記念碑的摺物
《亀》【前期展示】
西洋の絵画技法を吸収－洋風風景画の代表作
《阿蘭陀画鏡 江戸八景 観音》【後期展示】
第一級の北斎摺物群「津和野藩伝来摺物」75点を展示
《曙艸（吉野山花見）［津和野藩伝来摺物］》（部分）【展示2/7～2/12】
美しく繊細な色彩を今に伝える狂歌摺物の逸品
《巴待の御札［津和野藩伝来摺物］》【展示1/10～1/22】
これぞ一世を風靡した「宗理美人」の逸品
《人を待つ美人図》【通期展示】
※作品は全て葛飾北斎筆、島根県立美術館蔵（永田コレクション）です。
※前期展示は2023年12月23日～2024年1月15日、後期展示は1月17日～2月12日、通期展示は全会期、展示します。
※［津和野藩伝来摺物］は1～2週間で全作品を展示替えします。
永田生慈（ながた せいじ）（1951-2018）
島根県津和野町出身の北斎研究者。元・太田記念美術館副館長兼学芸部長。1990年、津和野町に葛飾北斎美術館を開館（2015年閉館）。北斎に関する数多くの論文・著書を執筆し、国内外で多くの北斎展の監修を務めた。2016年、フランスの芸術文化勲章オフィシエ受章。2017年、所蔵するコレクション2,398件を島根県へ寄贈。翌2018年2月6日逝去（享年66）。
◎記念講演会「葛飾北斎 青雲の志」
永田生慈氏のもとで北斎研究にあたったことのある日野原氏をお招きし、北斎の若き頃の画業についてご講演いただきます。
［日時］2024年1月28日（日）14:00～15:30
［講師］日野原健司（太田記念美術館 主席学芸員）
［会場］講義室 申込不要／先着40名／聴講無料
※観覧券またはミュージアムパスポートが必要
◎受贈報告「永田生慈 北斎コレクション－寄贈の経緯と全貌公開に向けて」
永田コレクションの概要や受贈の経緯について、本展を企画した島根県立美術館の担当学芸員がお話します。
［日時］2024年1月14日（日）14:00～15:30
［講師］大森拓土（島根県立美術館 専門学芸員）
［会場］講義室 申込不要／先着40名／聴講無料
※観覧券またはミュージアムパスポートが必要
◎ワークショップ「北斎ステンシルで作るハーフ手ぬぐい」
北斎の描いた挿絵を型染めして、オリジナルの手ぬぐいを作ります。
［日時］2024年1月13日（土）、14日（日）各日 ①10:00～ ②11:00～ ③13:30～ ④14:30～ ⑤15:30～ ※所要時間約30分
［会場］美術館ロビー
［対象］どなたでも（小学3年生以下は保護者同伴） 要申込／各回先着8名／参加無料
※観覧券またはミュージアムパスポートが必要
【申込方法】2023年11月15日（水）午前9:00からお電話で受け付けます。
電話番号：0856-31-1860（グラントワ代表）
イベント名、参加希望の日時、氏名、年齢（学年）、電話番号をお知らせください。
◎グラントワtea ガーデン
①「福茶」
新春のお祝いに、梅昆布茶に金粉を浮かべたお茶をご提供します。
［日時］2024年1月3日（水）10:30～
［会場］美術館ロビー 先着100名／無料
※観覧券またはミュージアムパスポートが必要
②「復活茶」
病に倒れた北斎が自らの快復を願い作ったゆずの薬に似せた「ゆず茶」をご提供します。
［日時］2024年2月10日（土）10:30～
［会場］美術館ロビー 先着100名／無料
※観覧券またはミュージアムパスポートが必要
◎みるみると北斎をみる
対話型鑑賞を研究・普及するグループ「みるみるの会」のメンバーと一緒に、おしゃべりしながら北斎の作品をくわしく鑑賞しましょう。
［日時］2024年1月13日（土）、1月21日（日）各日14:00～
［会場］講義室 申込不要／各日先着15名／参加無料
◎ギャラリートーク
担当学芸員が展覧会の見どころをわかりやすく解説します。
［日時］2024年1月8日（月・祝）、20日（土）、2月3日（土）、11日（日）各日14:00～
※観覧券またはミュージアムパスポートが必要
◎前期も後期も見てもらおう！
本展は前期と後期で約9割の作品が入れ替わります。前期をご覧のみなさんにスタンプカードをお渡しします。後期も観覧してスタンプをもらいましょう。すてきな北斎グッズをプレゼントします！
【プレゼント期間】2024年1月17日～2月12日
【スタンプ押印】もぎりカウンター
【プレゼント引換】総合案内カウンター
◎空くじなし！北斎福引き！
「グラントワ共通カード」、「ミュージアムパスポート」会員様を対象に、北斎グッズが当たる福引きを開催します。
【新春福引き】2024年1月3日（水）～8日（月・祝）
【節分福引き】2024年2月3日（土）～12日（月・振休）
※当日ご入会の新規会員様も参加いただけます。
※「ホール友の会」、「シマチケ」会員は対象外です。
企画展「石見特別版 永田コレクションの全貌公開〈一章〉北斎－『春朗期』・『宗理期』編」に関連した書籍やグッズをミュージアムショップにて販売します。
永田生慈 北斎コレクション総目録Ⅰ「春朗期」・「宗理期」編 販売
津和野町出身の北斎研究者・永田生慈氏より島根県に寄贈された北斎とその門人の作品・資料2,398件を全4冊に分けて収録する総目録を販売します。総目録Ⅰでは、北斎が浮世絵界にデビューした20歳から45歳頃（※年齢は数え年）までの作品を中心に掲載。県外不出の永田コレクションを、ぜひお手元でお楽しみください。
2023年発行／390頁価格 3,300円（税込）
※総目録Ⅱ～Ⅳは、今後発行予定です。
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